2025年02月27日
ニューヨーク市内の新規オープンレストラン情報
高知県食品海外ビジネスサポーター アメリカ東海岸担当
清水 紀之
グーグルマップデータを使って収集したデータによると、マンハッタン区、ブルックリン区、クイーンズ区、ブロンクス区、スタテン・アイランド区の5行政区からなるニューヨーク市には、全体で48,960 軒のレストランがあるそうです。
そして、店舗数の多いレストランのジャンルを見てみると、第一位がメキシカン料理のお店で約5,600 件、二位以降が中華料理、イタリア料理、アメリカン料理と続き、第五位に1,347 件で日本食料理のお店がランクインしています。
また、全米規模で日本食のレストラン数を検証してみると、数年前のリサーチ結果にはなりますが、2023 年にJETRO が実施した「米国の日本食レストラン動向調査」によれば、2018 年の調査時は18,600 店であった日本食レストラン数が、2022 年には23,064 店に増加しており、さらに、全米50州のうち、日本食レストランの多い州を並べてみると、2022 年時点において、ニューヨーク州は全米第二位の1,936 件(注:前述は“ニューヨーク市”の店舗数)、そして第十位までに、ニュージャージー州(第六位)、ペンシルバニア州(第七位)と、ニューヨーク州と高速列車AMTRAKで繋がっている3州がランクインしています(ちなみに、これもAMTRAK で繋がっているマサチューセッツ州が、惜しくも第十一位)。
このように右肩上がりに店舗数が増加するに伴い、日本食レストランのスタイルも変化を遂げてきました。90 年代までは、日本食と言えば「寿司」「テリヤキ」「天ぷら」が代名詞で、レストランもいわゆる伝統的なスタイルかつ、日本人が調理、経営する「日本料理店」が主流でしたが、2000 年代に入ると日本食の専門店化が進み、高級寿司屋やラーメン店を筆頭に、蕎麦屋、うどん屋、うなぎ屋、焼肉屋、カレー屋、懐石料理店、居酒屋などなど、日本本国と変わらないバラエティーに富んだ専門店の出店が盛んになりました。
同時に、専門店化は、オペレーションの簡素化も促すようになり、したがって、これまで必要とされてきた、マルチな日本食の調理技術や知識、経験を持った日本人の熟練料理人に代わり、そのジャンルに特化した知識と調理技能を持つ料理人が活躍できる機会
が増え、それは同時に、日本食に携わる“非日系”シェフやレストラン経営者を多く生み出す事に繋がったと言えます。
それが顕著に現れているのが「寿司」と「ラーメン」です。他州の状況は分かりかねますが、ニューヨーク市内の寿司屋、ラーメン店を見てみると、おそらく半数近く、もしかするとそれ以上が非日系人の運営するお店のように感じられます。
特に寿司については、ここ数年で「TEMAKI」や「OMAKASE」の専門店が大増殖しており、その多くを非日系人オーナーやシェフが運営しているように見受けられます。そして、それらの価格は、日本人が一般的に想像する価格を余裕で超えてきます。また、今では、ニューヨークの伝統あるステーキハウスでも寿司メニューをオーダーできる時代になりました。
と、ここまで聞くと、日本食ビジネスがこれからも少しずつ変化を遂げながら順調に伸び続けるイメージを抱きますが、一方で、全米規模で見ると、レストランの約 60% が最初の1 年以内に、そして約 80% が 5 年以内に閉店するというデータも出ており、さらに、ニューヨーク市の比率は、諸々のコストの高さと競争環境の激しさも相まって、全米平均よりもさらに高いそうです。ちなみに、2024 年に話題となった、アメリカを代表するレスランチェーンの倒産、閉店のニュースで言うと、日本人になじみのあるお店だけでも、以下のような有名店が規模の縮小を計画しています。
・「レッドロブスター」:破産法(チャプター11)を申請、破産手続きに入り50 店舗を閉鎖。
・「ピザハット」:500 店舗を閉鎖
・「デニーズ」:2024 年末までに20 店舗を閉鎖
・「アウトバックステーキハウス」:700 店舗のうち41 店舗を閉鎖
ニューヨーク市に至っては、パンデミックにより、2020 年にはレストランやバー1,000 軒程度が閉店したものの、パンデミック後は、ニューヨーク市を訪れる観光客やビジネスパーソンが激増した事もあって、飲食業界も順調に回復傾向にありましたが、昨今の人手不足問題やインフレ、そして消費者行動の変化が、業界に新たな課題を提示しています。一方で、そのような困難な状況から、また新しい何かが生み出されるのがニューヨークという場所でもあります。
そこで今回は、そんなニューヨーク市内でここ数ヶ月内に新規オープンした日本食絡みのお店、および、これからオープン予定の注目店を紹介したいと思います。
Tsumo
https://www.tsumony.com
エリア: マンハッタン区・アッパー ウエストサイド
マンハッタン区キップス ベイ地区にある 100 ドル以下のおまかせコース店である同店が、アッパー ウエスト サイド地区に 2 号店をオープン。1 号店と同様に、ディナーは13 コースで 58 ドル。また、11 コースで 48 ドルのランチ オプションも提供。
Awa Noodle Bar
https://www.instagram.com/awaramen_39/
エリア: マンハッタン区・ミッドタウン ウエスト元ナルトラーメン(主にニューヨーク市内に展開)のシェフが手掛ける同店は、ブライアントパーク(ニューヨーク公共図書館がある場所)のすぐ南にある小さなカフェの裏にひっそりと佇む、ラーメンの ”Speakeasy”(*禁酒法時代のもぐり酒場の例え)。45 ドルの和牛ラーメンをはじめ、約7 種類のラーメンが楽しめる。
Muji Food Market
https://www.muji.us/pages/muji-market-nyc
エリア: マンハッタン区・ミートパッキング
有名観光スポットとなった「チェルシーマーケット」内に出店しているMUJI(= 無印良品)では、米国において同ブランド初となる食品売場がオープン。ラテアートを作るロボットバリスタのほか、おにぎり、みそ汁、カレーカップ、どら焼き、トマトサンドなどを提供。
Mitsuru
https://mitsurunyc.com
エリア: マンハッタン区・ウエストビレッジ
ミシュランスターの高級寿司店「Sushi Yasuda」の元シェフが手掛ける同店では、日本の魚介料理と少量生産のアルザス産ピノ・ノワールのペアリングがお勧め。寿司、手巻き、グリル料理などのアラカルトメニューのダイニングルームと、8 席のおまかせカウンターを用意。
Bananas
https://www.bananasrestaurant.com
エリア: マンハッタン区・イーストビレッジ
同店は、Shmoné や Blue Ribbon で働いていたスタッフが運営する、ミニマリストな「アジアン・アメリカンレストラン」で、レストランのあちこちに飾られているバナナのモチーフが印象的。日本酒の飲み比べセット、焼酎ベースのカクテルなども提供。
Sushi Counter
https://sushicounternyc.com
エリア: マンハッタン区・イーストビレッジ
昨年、1号店がウエストビレッジ地区にオープンする際、「オーストラリア風の寿司」の正体が分からず噂となった同店の2号店が、反対側のイーストビレッジ地区にオープン。なお、オーストラリア風の寿司の正体は、オーナーの故郷であるメルボルンの街角で見られる、手軽な手巻き寿司とのこと。
Moody Tongue Pizza
https://www.moodytongue.com/location/moody-tongue-pizza/
エリア: マンハッタン区・イーストビレッジ
マンハッタン区、ウエストビレッジ地区にバーと寿司レストランを構えるシカゴ発祥のビール醸造所「ムーディー タン」は、イーストビレッジ地区に「東京ナポリ風ピザ店」をオープン。同店は、ニューヨーク市内で最高のナポリ風ピザ屋の呼び声が高い「Song’ E Napule」の元ディレクターが運営。ピザに合う日本酒も提供。
Kamisama Ramen
https://kamisamaramennyc.toast.site
エリア: マンハッタン区・イーストビレッジ
同店は二郎系ラーメンの専門店で、ボリュームたっぷりの「ゴワゴワ」麺とたっぷりのトッピングが自慢。豚骨、醤油、野菜スープのラーメンのほか、たこ焼き、餃子、揚げ出し豆腐、唐揚げなどの前菜、そして多種の丼メニューも提供。
Tōka Chef Kitchen
https://www.tokachefkitchen.com
エリア: マンハッタン区・ロワーイーストサイド
同店は、姉妹店である「Matsunori」 のチームが運営。数種類のテイスティング メニューを提供。生魚料理に、揚げ魚や麺メニューがセットになった 46 ドルコースがお勧めとのこと。また、同店は BYOB 店(お酒類の店内持ち込み可)で、持ち込み料金は掛からない。
Kiko
https://www.kikonewyork.com
エリア: マンハッタン区・ハドソンスクエア
シェフとドリンクディレクターは、Il Buco や、Pujol、Sushi Noz、Momofuku といった、市内の有名店での勤務経験があり、また、彼らの片側の両親は、市内で最もロマンティックなレストランと形容される「One If By Land, Two If By Sea」を経営していた過去を持つ。同店は、ダンジネス・クラブとカニ脂の寿司めしや、3 度揚げのチキンウィング、クリスピーライスとメイン(州の)ロブスターサラダなど、中国と日本の料理のアイデアを反映させたメニューを提供。
The Residence of Mr. Moto
https://www.residenceofmrmoto.com
エリア: ブルックリン区・ウィリアムズバーグ
カジュアルな雰囲気の同店は、マンハッタンにある高級寿司「The office of Mr.Moto」の姉妹店。店名の通り、”ミスター・モトの家” というコンセプトで提供される料理は、The office of Mr. Moto でのおまかせメニューとは異なり、60 時間かけたお茶漬け用の魚介スープを使った「海鮮丼」がメイン。姉妹店と同様に、店内にはバイオリンやビンテージ スーツが飾られ、テーブルには執事のベルが備え付けられるなど、劇場的な雰囲気が感じられる。
Enso Omakase
エリア: ブルックリン区・ウィリアムズバーグ
禅における書画のひとつである「円相」を店名としている同店の店内は、京都の伝統的な侘び寂びのインテリアデザインからインスピレーションを得た空間となっており、ラウンジルームと裏庭の日本庭園では、ウォークインでの「おまかせ」体験を提供している。新鮮な魚介類は、毎週日本から直送。16 コースのおまかせコースを 195 ドルで提供。2025 年にはラウンジ スペースもオープンし、95 ドルのおまかせコースのほか、アラカルトメニューも用意する予定。
Tokidoki
エリア: ブルックリン区・ウィリアムズバーグ
日本料理とユダヤ料理のフュージョン店である「Shalom Japan」の姉妹店。同店では、おにぎり、コーヒー、パストラミをミルクパンに挟んだ料理のほか、日替わり弁当やカクテルなども楽しめる。
Bagle Joint
https://www.bagel-joint.com
エリア: ブルックリン区・グリーンポイント
ここ数年間、ウィリアムズバーグ地区の有名野外フードマーケット「スモーガスバーグ」での定番ベンダーとなっていたベーグルジョイントが、グリーンポイント地区に実店舗をオープン。ユダヤ人と台湾人の夫婦が経営する同店では、味噌ベーグルにワサビクリームチーズ、スモークツナ、キュウリサラダなど、アジア風の様々なサンドイッチを提供している。
Kyo
https://www.haveanicekyo.com
エリア: ブルックリン区・ベッドフォード-スタイブサント
元 「Chef Katsu Brooklyn」のチームが手掛ける、ベッドスタイ地区にある日本食カフェ。コーヒー、抹茶をはじめ、日本の軽食やペストリーを楽しめる。
Osukāā
https://lic.osukaanyc.com
エリア: クイーンズ区・ロングアイランドシティー
同地区にあるコワーキングスペース「The Factory LIC」内に立地する寿司レストラン。同店では、100 ドル以下のおまかせメニューに加え、ランチスペシャルメニューもいくつか用意。69 ドルで13 貫、99 ドルで17 貫が楽しめる。ランチでは、ちらし丼、カリフォルニアロール、シューマイ2 個、海藻サラダが付いた弁当セットなど、さまざまなセットメニューを提供。
Verse Cafe
https://www.instagram.com/versecafenyc/
エリア: クイーンズ区・アストリア
抹茶とペイストリーを提供する日本風カフェ。週末には生魚料理、卵サラダサンド、ウニの手巻きなど、フルフードメニューも提供。
Seichou Ramen
https://www.instagram.com/p/DC-qWm-sYrH/
エリア: クイーンズ区・エルムハースト
同店では、豚骨、味噌、塩ラーメンを提供。スープは朝 5 時から煮込む。ビールや日本酒も提供。お店の赤い提灯と木の梁が特徴的。
Wagyu Yama
エリア: クイーンズ区・フラッシング
フラッシング地区では、ここ数か月で会員特典のあるしゃぶしゃぶ店が2軒オープンしたが、同店はその内の一軒。同店は食べ放題店で、年間 30 ドルの年会費を支払うと、来店毎に会員とその同伴者が 1 人 10 ドルずつの割引を受けられる。
<2月以降にオープンのお店>
Kobano
https://www.kobanony.com
エリア: マンハッタン区・イーストビレッジ
ジャパニーズ・ブラジリアンスタイルのレストランで、以前メキシコ料理店を経営していたオーナーのお店。シェフの一人は、元ヤンキースの専属シェフ。さまざまなバリエーションのフェイジョアーダ(黒豆や豚肉、牛肉などを煮込んだブラジルの代表的な料理)から、巻き寿司、クリスピーライス、焼き鳥まで、多種の料理を提供。ミラーボールと豊富なカクテルリストからパーティー気分が味わえる。
MM by Morimoto
https://www.mmbymorimoto.com
エリア: マンハッタン区・ミッドタウン サウス
2020 年に閉店した「料理の鉄人」森本シェフの新しいお店が、2025 年中にマンハッタンにオープン予定。なお、同店は1号店をニュージャージー州のモンクレアに今春オープン予定。
Papa San
https://www.papasannyc.com
エリア: マンハッタン区・ハドソンヤード
ブルックリン区、ウィリアムズバーグ地区のモダンペルー料理レストラン「LlamaInn」のチームが手掛ける「日本風ペルー料理居酒屋」。同店は、同じく姉妹店であるウエストビレッジの有名店「Llama San」と同じく、ペルーの日系料理に傾倒。セビーチェ、おにぎり、炉端焼きをはじめ、目玉は、骨付きスープ、パリパリの皮、テンダー、ソーセージ、ハツ、砂肝など、さまざまな形で提供される「鶏の丸ごと体験」コース。カクテルは、ブエノスアイレスで評判の高いカクテルバー「Tres Monos」のチームが開発。146 席のスペースには、吊り下げられた観葉植物、ペルーの織物、そして、プライベートダイニングルームへと続く螺旋階段などが設置。
以上