2024年10月04日
ニューヨークのトレンドと県食材のビジネスチャンス
高知県食品海外ビジネスサポーター アメリカ東海岸担当
清水 紀之
人種のるつぼと形容されるニューヨークでは、世界中から集まった人々がその国固有の食生活を持ち込み、フュージョンという形で異なるもの同士が混ざり合い、ローカライズされ新たなトレンドを創造しています。また、無論、食生活の違いは異人種間のみに見られるものではなく、同人種間においても、昨今は、健康志向の強い食生活を好まれる方、肉類を避ける方などをはじめ、それぞれの嗜好のカテゴライズが進み、食の多様化、細分化がますます加速したように感じられます。
そこで今回のレポートでは、全米の全業種を対象とした「働きたい企業」ランキングのトップ5にランクインし、食品業界に限ってはトップの人気を誇る、ニューヨーク郊外発祥の大型スーパーマーケット「Wegmans(ウェグマンズ)」のトレンド商品、人気商品を取り上げ、前述の「フュージョン」や「ローカライズ」というキーワードを切り口に、「もしもこれらの商品に、高知県の食材が使われていたら?」と想像をめぐらせる事で、高知県食材が持つポテンシャルを再認識いただきつつ、同時に、これらの情報が、高知県事業者様の今後の商品開発の一助となるようでしたら、誠に幸いでございます。
(1)冷凍加工食品
ニューヨーカーの大人気料理のひとつとなった「ラーメン」。この棚では、スープ付きのラーメンセット商品やスープのみの商品が販売されている。なお、スープ商品は「グルテンフリー」で、昆布、酒、赤味噌が合わさった旨味たっぷりの「ビーガン向け」商品との打ち出し。また、パウチも、プラスチックの原料となる化学物質であるBPAが含まれていない「BPA FREE」をアピール。
代替品・競合品として、高知県で収穫される海藻や様々な野菜、ならびに高知のお酒などから、高知県色の強いスープ商材を企画、展開してみたら面白いのではないか。
また、米国そしてニューヨークの名物と言えば「ピザ」。同店に限らず、スーパーマーケットでは「冷凍ピザ」の種類が豊富で、そのクオリティーも向上しており、競争が激しくなってきている。特に同店のPB商品においては、人工着色料や香料、保存料を一切使用していない事を売りにしている。
それから「冷凍丼(Bowl)」も人気で、様々な種類の商品が陳列されている。例えばこの棚では「Daily Harvest社」の商品が多くを占めているが、同社は、健康的な食事を摂りたいものの、多忙につき食材の買い物や調理をしている時間がない人々をターゲットに、果物と野菜がふんだんに使われた、簡単で美味しくヘルシーで、いつでも調理可能な冷凍食品のD2C(Direct to Consumer)サブスクモデルで成長を遂げた企業である。
最後は「冷凍フルーツ」。世界の冷凍フルーツの市場規模は年々右肩上がりとなっており、その市場を支えているのが、前述同様、健康志向の高い消費者である。
この棚では「Tru Fru」社の商品パッケージが目に付くが、同社は、チョコレートxフルーツの組み合わせの加工品を専門とするメーカーで、陳列されている商品は、農園から摘み取った苺をまるごと冷凍させ、苺の表面をホワイトチョコレートでコーティング後、ダークチョコレートで包み込んでいる。
(2)発酵食品
ニューヨークはヨーロッパ移民によって造られただけあり、食文化を中心に、基本的にはヨーロッパの文化がベースになっている。したがって、チーズの種類も豊富。写真中央に位置する、私が好きな同店オリジナルのチーズ「Sake 2 Me」は、製造工程の最後にお酒でウォッシュされている一品。
また、ヨーグルト商品も多数販売され、競争が激しい。この棚では、下部にフルーツが入っている、かわいい瓶詰めヨーグルト「nounos(ノウノス)Creamery」の商品が目につく。こちらは、ギリシャの伝統的なヨーグルトの味を再現するべく、可能な限りの手間をかけ、味や品質を保持するために少量生産にこだわった、ニューヨーク発のブランドである。
(3)中東系食品
日本でも徐々に人気が高まりつつあるHUMMUS(ハムス)は、イスラエルやトルコ、エジプトなどの中東地域発祥の豆からできたペースト状の料理で、野菜にディップして食べるのが主流。現在は味の種類も豊富で、スパイシーなものだけでなくスイーツHUMMUSも登場。また、アンチエイジングにも効果があると言われている。野菜スティックと一緒にパッケージされた商品もあり、これこそ「園芸王国」高知の魅力、実力を体現できる商品ではなかろうか。
(4)サラダボウル
元々ニューヨークを中心としたアメリカ発祥の、「野菜+果物+肉や魚や卵+穀物+ナッツ」などの主食と副菜が組み合わさった栄養満点のサラダボウルで、POWER SALAD(パワーサラダ)とも呼ばれる。人間が必要としている栄養素を1食に閉じ込めており、栄養をバランスよく摂取するのが難しい多忙な現代人にとって、効率よく栄養摂取できる同商品は大人気。また、ひとり暮らしのニューヨーカーにとって、一回で食べ切れるサイズの同商品は、野菜を腐らせる事もなく、ボリューム面でも最適。
(5)コールドプレス(低温低圧圧縮)ジュース
素材に熱を加えず生のまま強い圧力をかけ、素材が持っている水分を搾り出す、日本でもおなじみの同商品は、元々、米国で流行していたドリンク。
この棚に陳列されている商品は全て同社のPB商品であり、フルーツジュースだけでなく、野菜ジュースも散見され、中には、高知県の特産のひとつである「生姜」がミックスされたジュースもある。また、レモンやオレンジジュースは散見されるが、まだ「柚子」ジュースは商品ラインナップに入っていないようだ。
(6)スモーク・サーモン
外国人、特にアメリカ人はサーモンが大好き。寿司ネタでもサーモンは圧倒的な人気を誇るが、数あるサーモン料理の中で頂点に君臨するのがスモーク・サーモンではないだろうか。ここでは、ニューヨークの絶品スモーク・サーモンで有名な、スモーク・サーモン工場「ACME」社の商品が陳列されていたが、パッケージには「TOGARASHI」の表記が見られた。最近はスモーク・サーモン商品の種類も増え、このような何かしらのスパイスで味付けされた商品が散見されるようになったので、それこそ高知県の「山椒」風味や「柚子」風味などの商品があっても良いだろう。
(7)コンセプトTEAドリンク商品
「Plant Based(植物性由来)」や「ノン・カフェイン」を謳った商品は数年前から存在していたが、最近は、凝ったデザインで、かつユニークな味わいを持つ缶のお茶系ドリンクの種類が増えてきた。
写真上段の「Twrl」は、アジアのメジャーなお茶に改良を重ねて出来た、おいしい植物ベースの健康的なミルクティーラテ。下段の「SHAKA」は、ハワイ諸島でのみ採れる世界で最も希少なハーブティーの 1 つ「ママキ茶」から造られた、糖質、カロリー、炭水化物全てゼロが売りの「ノン・カフェイン茶」。
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(8)調味料商品
米国のメインストリーム向けの大手スーパーマーケットにて、ここ数年、アジア系の調味料の種類が増えてきた。日本の調味料では「ふりかけ」が、そのまま「FURIKAKE」として販売されており、ふりかけが市民権を得だしたように感じるなか、同店では「柚子」ふりかけを販売している。
(9)シリアル商品
米国人の朝食の代表格と言っても過言ではない、オートミールやグラノーラといった朝食用の穀物加工品であるシリアル商品の市場では、競合各社がひしめくが、それだけ消費者の需要が高いマーケットであり、写真にも掲載されているように、ユニークな風味や様々なドライフルーツがミックスされた商品などが、日々登場している。
(10)ドライフルーツ商品
米国ではドライフルーツ商品の品揃えも豊富。一方で「園芸王国」高知とすれば、同商品との親和性は非常に高いのではないか。なお、生姜のドライフルーツは良く見かけるが、少なくとも同店において、まだ「柚子」のドライフルーツが販売されているのを見た事はない。
(11)エナジー系商品
エナジードリンク、エナジーバー共に、今後も世界の市場規模は拡大し続ける見通しの中、それを牽引しているのは、やはり北米市場である。エナジードリンクと言えば、カフェイン、砂糖、甘味料や着色料が大量に含まれているというイメージだが、最近の北米の市場では、よりナチュラルな原材料を使った、新しいエナジードリンクが増えている。
この棚では、ここ数年で急成長を遂げたスウェーデンのブランド「CELSIUS」が大量に陳列されている。同ブランドは、米国のフィットネス系エナジードリンクブランドとして位置づけられ、健康志向が高い消費者やフィットネス愛好者からの支持を集めることに成功。ナチュラルなエナジードリンクとして、競合と一線を画したポジショニングを確立している。
また、仕事の合間やエクササイズ前、そして小腹が空いた時などに手軽に食べられるエナジーバーも、アクティブな現代人の日々の生活の中で、合理的かつ手軽な携行食品として定着している。スポーツ産業が盛んな米国では、近年の健康ブームや人々の食への関心の高まりもあり、多種多様なエナジーバーが誕生している。
競合がひしめくエナジードリンク、エナジーバー市場であるが、写真からも分かる通り、現在は、様々なフレーバーや個性的な商品が流通しているので、高知の食材を使って作られた商品にも、十分に市場参入できる可能性があると考える。
(12)子供向け商品(ベビーフード)
大手メーカーの市場独占度合いが強いベビーフード市場において、現在注目されているのが、肉類を売りにした、乳幼児向け食品のスタートアップ企業の「Serenity Kids」である。同社は、高タンパク質、低糖、健康的脂肪、有機野菜、そして少量の質の良い炭水化物から構成される、バランスのとれたマクロ栄養素の提供を目的としており、これまでベビーフードと言えば、果物や野菜が主原料であったところ、同社は、動物性タンパク質を携帯に便利な常温のパウチにて提供する革新的な存在であり、大手メーカーの商品で埋め尽くされるベビーフードの商品棚において、動物性タンパク質が主役の商品には目をひかれる。
(13)カクテル & モクテル商品
コロナ禍による宅飲みニーズも手伝って、スーパーマーケットには、カクテル系商品が増えた。カクテルミキサー(割り材)のブランド「AVEC」は、100% 本物の果汁と本物の原材料から抽出した天然植物由来成分のブレンド・カクテルミキサーを提供。
一方、アルコール飲料が苦手、または飲めない人々向けには、ブランドの「Mingle」などに代表される、ノンアルコールカクテル「Mocktail(モクテル)」の商品ラインナップが充実してきている。