海外拠点だより

2022年09月22日

第18号記事【シンガポールだより】を掲載します。

<シンガポールから土佐日記>

 

~高知県の海外市場開拓~
 この原稿執筆中の9月13日、高知県の2021年(令和3年)食品輸出実績が発表になりました。食品輸出において総額が19億円、これは前年比の16%増であります。パンデミックの影響を考えれば大健闘です。なかでも酒類が85%増、柚子や加工品も二桁成長。中国向け水産物がコロナ影響で25%の大幅減であることを除けば、高知県全体として海外事業強化の方向性に沿った成果と言えるのではないでしょうか。世の中の逆風にめげない県内事業者様はじめ、輸出振興に携わるすべての皆様のご尽力に敬意を表したいと思います。

 

2021年(令和3年)高知県の食品輸出実績

 

 輸出先国別のデータも興味深いものがあります。輸出総額19億円のうち、ほぼ4億円が米国向けで全体の21%を占めて国別実績でトップになりました。前年の2倍以上の伸長です。それに続くのが中国で全体の16%。しかし前年比較では23%減少です。続くのがシンガポールで全体の14%、前年比17%増で国別実績の3番手となりました。前年は中国に続く2番手でした。人口600万人の小国が、14億人の中国や3億人の米国と遜色のない輸出先になっていることに驚きます。また、シャワー効果というのでしょうか、周辺国のマレーシア、ベトナム、インドネシア向けの輸出が安定的に伸びていることが注目です。東南アジア地域の総人口6億人を背景として、年間GDP伸長率5%を超える成長度合いが日米欧とは比べ物にならないのがこの地域の魅力です。その要衝にあるのが、この小国シンガポールであるという特殊性をあらためて思います。4半世紀前に高知県が東南アジアの出先拠点としてシンガポールを選択したのはまさに先見の明であったでしょう。しかしながら、中長期視点で見れば時代も環境も移り変わります。モノづくりについていえばベトナムやタイ、さらにはインドネシア、インドへのシフトは間違いないところですし、食品であれ、観光インバウンドであれ、将来需要は間違いなくシンガポール外の周辺国が主要ターゲットになります。そこの市場開拓をどのような方法論で仕掛けてゆくか?海外に活路を見出したい高知県にとって、次世代を見据えた海外ビジネス強化の新しい仕掛けと工夫が喫緊の課題であると思います。

 

~高知県事務所から卒業~
 当地シンガポールでは季節の移ろいがなく、日本独特、四季折々の御挨拶の言葉も浮かんでまいりませんが、2022年9月末日をもちまして高知県シンガポール事務所長の役割を終えることをお知らせいたします。2020年4月に現職を拝命いたしましてから約2年半となります。多くの時間をコロナに翻弄されました。当時はゼロコロナを志向していたシンガポールの厳格な水際対策(規制)ルールで、入国後ホテルでの「隔離監禁状態」を3度経験しました。また、入国許可がおりずになかなか赴任してこない副所長を首を長くして待った期間も思い出されます。いつも高知にゆくのを楽しみにしていた、頼りになる現地スタッフの闘病と今春の早逝は最も悲しい出来事でした。そして、今ようやくフリーに往来が出来るようになったシンガポール周辺国ですが、昨年まではオフライン交流はほぼできない状態が続きました。高知県のモノづくり企業の多くはシンガポール外でのビジネスですので、そこへの御支援がままならないのは「隔靴掻痒」そのものでした。

 

 そんなコロナ禍ではあったのですが、与えられた環境下で「出来ることをやる」をモットーに、副所長と二人三脚で高知県に関するすべてのことの海外展開支援に取り組んでまいりました。なんとも、微力・非力を自覚させられるばかりの毎日ではありましたけれども、皆様からさまざまご指導ご鞭撻をいただきここまで運営ができましたのは誠に有難いことでございました。弊職の後任につきましては現在未定ですが、新しい体制が決まるまでは副所長の西森が実質責任者の役割となります。引き続き御支援を賜りますよう、この場を借りてお願いを申し上げます。

 

 高知県との最初の御縁をいただいたのが2014年。民間企業をリタイアして「毎日が日曜日」の日々を過ごしていた時にお声がけをいただき、2016年までのほぼ3年間を高知県産業振興センターにてお世話になりました。高知どころか四国に足を踏み入れたこともない人間が何の事前知識もなく単身赴任したのは今考えれば無謀、無思慮なことでしたけれども、赴任後の県内事業者様とのハンズオン支援を通じていくつもの新しい発見が嬉しく、高知県の持つ潜在力に確信を持った時期だった気がします。海外進出や商品企画の方法論、さらには事業経営の本丸である「戦略性」のブラッシュアップテーマなど、事業者様との本気のやり取りが懐かしく思い出されます。その後一時期民間に戻り外資企業勤務ののち、シンガポールにて高知県との縁がつながりました。「2度あることは3度ある」といいますから、いずれまた高知県との縁が復活するやも知れません。その節は、また暖かく迎えていただけますよう今からお願いをしておきます。

 

 ここまで大変お世話になりました。皆様個々に御挨拶申し上げたいところ、まったく略儀ではございますがこの拙文にて御礼と御挨拶にかえさせていただきたいと存じます。

 

高知県シンガポール事務所長 依田康夫 拝

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