海外拠点だより

2021年11月22日

第15号記事【パリだより】を掲載します。

コロナ禍での初の海外出張となったドイツANUGAへの出展

 

高知県食品海外ビジネスサポーター 欧州担当
奥本智恵美

 

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、2020年3月以降、三度にわたるロックダウンを経験したフランスですが、今夏から、徐々に生活が通常化してきており、マスク着用義務のない屋外では、マスクを外している人が大部分を占めるなど、すっかり元の活気を取り戻しています。

 

 フランスの人たちが「最も強く待ち望んでいた」と言っても過言でもないのが、カフェやレストランの再開です。美味しい食事を外で取ることと同じくらい、あるいは、それ以上に望んでいたのは、大切な家族や友人とテーブルを囲むことや店の方との交流でした。
 テラス席が再開したのが今年5月、そこから段階的に規制が解除され、パリ市内では、朝から夜まで賑わう様子が広く見られるようになりました。半年を経た現在でも、外食業界の盛り上がりは止まることを知らないようです。

 

 現在、フランスでカフェやレストランを利用するには、「衛生パス」の提示が必要です。衛生パスとは、「ワクチン接種証明」か「陰性証明(PCR検査、または抗原検査に基づいて、72時間以内に取得した新型コロナウィルス感染が陰性であるという証明)」を含んだQRコード付きデジタル証明書、または紙の証明書のことです。8月からは、バー及びレストラン、長距離交通機関、映画館等でもこの衛生パスを提示することが義務化されています。衛生パスの導入は、自由を制限するものとして物議を醸しており、今でも抗議デモが続いています。しかしながら、飲食・観光・文化他、様々なビジネスの再生には、衛生パスの普及が不可欠でした。

 

 国際的ビジネスチャンスの拡大にとって重要な場である展示会も、ヨーロッパ各地で次々に再開しています。10月9日から13日まで、ドイツのケルンで開催された国際食品見本市「ANUGA2021」も、その一つです。フランスから国外に出ることが極めて難しかった一年半を経て、私も、高知県のサポーターとしてANUGA2021に参加してきました。この会場に入る際にも、前述の衛生パスを毎日提示することが義務付けられていました。

 

 ANUGAは、世界約200ヵ国から約17万人が訪れる業界最大級の食品見本市で、私が参加するのは、前回の2019年に続いて2回目です。
 前回は、JETROのジャパンパビリオン内に、高知県から5社が出展し、高知県庁の輸出振興室と高知県貿易協会のチームも渡航されていました。しかし、今回は、コロナ禍でジャパンパビリオン内の出展企業数が絞られ、自社ブースに常駐できる現地法人または代理店を有していることが応募条件となった結果、条件を満たす北川村ゆず王国1社のみの出展(写真左:高知県ブース)となりました。同社のヨーロッパ代理店である、NISHIKIDORI社のブースも、高知県ブースが隣同士になるよう事前の調整を行っており、会期中はNISHIKIDORIの社長であるオリビエ・ドゥレンヌ氏(写真右:中央奥)とスタッフ2名の協力を得て、私が高知県の代表として、バイヤー対応を行いました。

 

 今回のANUGA2021では、衛生管理基準を守るために、各ブースと通路を、例年より広くレイアウトしたため、出展社数が、前回の約半分となりました。また、来場者数も、前回の半分以下の7万人と発表されております。
 しかし、ブースに立ち寄る方の多くは、真剣に商品を吟味して説明を聞いていた印象を持ちました。こうした見本市では、冷やかしでの試食や、バイヤーではない招待客が多いのですが、今回は、真剣に商談に来られている方の割合が極めて高かったと思います。例年に比べて混雑がない分、毎回、丁寧に、バイヤーの対応を行うことができ、相手のニーズを具体的に伺うことができたことは、逆に利点だったと言えます。
 高知産ユズのフランスへの輸出が実現して、もうすぐ10年になります。フランスでのユズ普及の立役者でもあるドゥレンヌ氏の話に、バイヤーは熱心に耳を傾けていました。一歩フランスを出れば、ドイツやオランダ、デンマークなどの北欧、ポーランドやチェコなどの東欧、そして、ロシアや中東でも、まだまだユズは「新しい」商品です。「名前だけは聞いたことがあるが試食するのは初めて」や、「フランス発信のブームを追いたい」という声がよく聞かれました。

 

 無事にANUGAへの出張を終えた今、高知県の生産者の方々や、日々メールやオンライン会議でやり取りをしている県庁輸出振興チームや企業の皆さんと、また一緒に見本市に参加したいと心から思います。生産者自ら渡航して伝える情熱は何にも代えがたいものです。そして、逆に私も、高知を再訪して、現地の自然に触れながら、生産者の方々と交流できる日が一日も早く来ることを願っています。

 

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