Ryoma dreamed Beyond the Pacific Ocean

2024年11月11日

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フランスで見られる日本料理本ブーム

 

高知県食品海外ビジネスサポーター 欧州担当
奥本 智恵美

 

 11月に入り、フランスでは恒例のクリスマスイルミネーションが、街のあちらこちらで始まりました。フランス語でクリスマスのことを「ノエル」(Noël)と言います。ヨーロッパの学校の新年度は9月始まりです。桜の咲く4月に新シーズンが始まるわくわく感が、こちらでは秋にあり、長い夏のバカンスを取った後、経済活動の方もそこから勢いよく動き始めて、このノエルに一旦ピークを迎えます。

 日本で一番大切な家族行事はお正月ですが、フランスではそれがノエルです。集まる人数は家庭の事情によりますが、通常は12月24日の夜から25日にかけては親戚一同が集う豪勢な食事会を開きます。その際、プレゼントを贈り合うのも大切なセレモニーです。このノエルのプレゼントは、親しい友人や同僚の間でも贈り合う習慣があり、お世話になった方へお礼をするのは、日本で言うところのお歳暮に近い感覚もあるかもしれません。

 

 このノエルのプレゼント、料理好きな方に喜ばれるのが料理本です。男女問わず、料理愛好家が多いフランス、さすが美食家の国と言われるだけあって、料理本の種類の多さや美しさ、そして内容の深さには感心せざるを得ません。人々がプレゼント選びに本腰を入れ始めるのが11月なので、その前の9月から10月にかけては毎年多くの料理本が出版されます。

 実は私自身も料理が好きで、日本食ビジネスのコンサルとして活動する傍ら、フランス人向けに出張料理教室を行ったり、自作レシピをSNSで発信したりもしています。そのような中、ラーメンのレシピ本を出さないかと、ある料理写真家から声をかけられ、フランスの出版社から2022年に初出版しました。この時もやはり、9月の新学期スタートに合わせての出版で、12月まではパリの書店などでサイン会をするなど忙しく走った思い出があります。

 

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2022年11月撮影 パリ中心の大型書店Fnac
ポルトガルやスペインの外国料理を脇に、日本が中央に。真ん中の青い「RAMEN」が拙著。

 

 2020年に始まったコロナ禍で、自宅で料理することへの関心が高まり、調理器具と料理本の販売が飛躍しました。自宅で過ごす時間が不可抗力的に増えたこの特殊な期間に、和食のように普段の食とは異なるレシピに挑戦した方も多かったようです。レストランの閉鎖が長期に渡り、外食で日本食を楽しむことができなくなり、また日本に旅行に行くこともできず、それならば自宅で味を再現しようと思い立ったという話もよく聞きます。2022年に私がラーメン本を出版したのも、正にその流れに乗る形でした。
 その年のノエル前は、多くの書店で日本料理のレシピ本が目立つところに並べられていました。今年の秋の書店風景も同様で、よりテーマに特化した日本料理本が増え、流行りのトップを走るRAMENに加えて、屋台メニュー、映画の中の日本料理、4ステップで作る和食、など様々です。「家庭で日本食を楽しむ」という流れが、コロナ禍をきっかけに根付き始めてきたと、私は見ています。さらに言うと、中国、韓国ほか日本を含むアジア各国の料理レシピや調味料への関心は確実に高まっていると思います。SNSを見ていても、料理家やインフルエンサーが、アジアの味を取り入れたレシピを発信することが増えています。

 

 この日本料理本出版ブームについて話を伺うため、パリ市内の料理書専門店La Librairie Gourmande(ラ・リブレリー・グルマンド)を訪ねました。2007年に開店した同店には、料理・製菓に関するあらゆる本が揃えられ、一般の料理愛好家から食のプロフェッショナルまで幅広い層の方から信頼を寄せられています。料理本を出版した人にとっては、こちらでトーク&サイン会に招かれることはステータスになるとも言えます。

 

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2024年11月撮影 La Librairie Gourmande
店内中央の棚にラーメン本とコフレが並ぶ。これ以外にも日本料理本を豊富に揃える。

 
 
 話は少しそれますが、これだけネット社会が進んでいても、フランスでは今も街の書店が愛されています。全国チェーンの大型書店も存在しますが、あえて地元の本屋で本を選ぶ方は多いです。書店オーナーやスタッフは本物の読書好きで、彼らにアドバイスを聞いて贈り物や自分の本を選ぶことも楽しみの一つです。こうした昔ながらの習慣は、食品についても同じことが言え、マルシェで肉屋か八百屋などと会話を交わして買物する光景は根強く残っています。全てがスピーディーな日本と比べると、時間の流れが随分と異なります。

 前述の書店オーナーのデヴォラさん曰く、やはり2020年以降に日本食のレシピ本が急増し、50冊以上が出版されているというお話でした。中でも、顕著なブームとなっているのはラーメンで、タイトルに「Ramen」を含むものは少なくとも30点はあるとわかりました。ただしこの中には、「コフレ」と呼ばれる、ラーメン鉢などと小さなレシピ本が一緒になった、ギフトセットも含まれます。この種のギフトセットも出版社が作り、特にノエル商戦に向けて積極的に売り出されるものです。

 

 日本食品の販路拡大という目で見ると、レストランへの卸売に比べて小売は売上の規模が小さいと思われ、ターゲットから外されがちです。しかしながら、フランスでは確実に日本食品に興味を持つ人は増えています。コロナ禍とインフレで飲食店の懐状況が厳しくなり、市民もまた外食の機会が減りました。今後は、小売でのヒット商品を狙う戦略を練ることも求められていくと思います。

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