2024年10月04日
アメリカ ラーメン市場
高知県食品海外ビジネスサポーター アメリカ西海岸担当
上原 孝詔
(1)歴史
アメリカでのラーメンの歴史は1972年に日清食品のカップラーメンのアメリカ進出まで遡る。この年、日清食品は、アメリカで最初のインスタントラーメン工場をCA州ガーデナ市に設立。設立には三菱商事が一部出資、米国三菱商事も原料購買のサポートを行っていた。同時期、東洋水産もMaruchanとして米国での販売を開始、その後1977年にCA州アーバイン市にインスタントラーメン工場を設立した。1978年には、サンヨー食品も米国へ進出、CA州ガーデングローブ市工場を設立した。
当時は、日本のラーメンそのままでは、米国には受け入れられないと考え、フレーバーは、ラーメンの基礎となっている醤油味、味噌味や塩味ではなく、ビーフフレーバーやチキンフレーバーといった現地の人々にも受け入れられるフレーバー商品での販売となり、米国日清と米国東水での熾烈な競争が始まった。結果ラーメンは安い食品の代名詞となり、長くラーメンは「廉価なファーストフード」というイメージを植え付けることにもなった。尚米国サンヨーは、当時から醤油味、味噌味や塩味をサッポロ一番ブランドで販売を続けている。
その間、日本式ラーメンを提供する専門店は、米国にも点在していたが、日本からの出店ではなく、現地の日本人が、アメリカに住んでいる駐在員、学生向けや現地の日本人のニーズに応える形が殆どであった。
2000年に入り、ラーメンブームに先行する形で、Naruto等のアニメの影響があったとされており、漫画に出てくるラーメンは若い世代の憧れの食事となっていった。
2004年には、西海岸にあった日系スーパーのMitsuwa内にあるフードコートに北海道のラーメン屋山頭火が1号店を開店。同年NYでは、Momofuku Noodle Barが開店。その後LA TIMES等の新聞でラーメンが取り上げあられ、昨今のラーメンブームの始まりとなった。その後日本から一風堂が2008年にNYに1号店を開店、2011年には、つけ麺のつじ田がLAに1号店を開店、後に一蘭(2016)等の日本の有名店の米国での開店ラッシュとなり、今日の、ラーメンブームへと続いている。
(2)概要
2004年以降、ラーメンマーケットは年20%前後で成長し続けており、マーケットの規模は$15億へと成長している。販売チャンネルとしては、外食(フードコート含む)、内食(スーパーでの販売)、ミールキット(有名なのがBlue Apron)等となるが、チャンネルとしては外食が圧倒的に多く、提供する店舗の形態は、専門店、居酒屋、一般日本食等が中心となっている。フレーバーは、豚骨がダントツとなっており、次に味噌、醤油、塩と続く。最近では、油面や混ぜ麺等のスープが必要無いメニューが増えている。また多くの店舗でビーガンラーメンを用意しており、その殆どは味噌味となっている。
今後の懸念事項としては、ラーメンスープ供給が上げられる。現状アメリカには、畜肉(エキス含む)が含まれる食品の輸入が実質不可能な状態であり、ガラスープが主体のラーメンスープは輸入が出来ない為、現地製造に頼っている。店舗でガラを炊く事も出来るが、非常に時間を要する事、味が安定しない等の理由で専門業者が製造するガラスープの需要は高い。
また麺製造メーカーも限られているが、比較的参入障壁が低い為、今後新規参入が見込まれている。また店舗で麺を作れる機器の販売も始まっており、自家製面を提供する店も出てている。
(3)販売チャンネル別
●外食市場
米国内にある日本食レストランは、23,000軒以上あり、ラーメンを提供するレストランが2,300軒以上ある。内ラーメン専門店は1,200軒以上となっている。今後も専門店は年平均で20%前後で増えていくと見込まれている。また供給側も充実してきており、一発型のスープ等を用意し、専門店以外でのラーメンの取り扱いも増えていくと見込まれており、寿司を提供するレストランが、ラーメンを提供するケースも増えている。
店舗での価格帯は、一杯$13-$18前後となり、例えば家族3人でラーメンだけを食べた場合でも、消費税、チップが含まれ合計$60前後と、日本のラーメンとは違う価値を作り出している。
●リテール市場(生ラーメン)
リテール品を製造しているのは、Sun Noodle、明星、Yamachanラーメン、JSLの4社であるが、JSLの製品は日系スーパーでは売られていない。明星は中華三昧ブランドでも生ラーメンを販売している。価格帯は2食で$6-$8となっており、数年前から30%-40%価格が上がっている。
主要な販売先は、日系スーパー、韓国系スーパーやその他アジア系スーパーが中心となっており、米系スーパーで見る事は殆ど無い状況。現在日系スーパーは大小合わせ138店舗ある。
現在過去にないインフレに直面している事から外食を控える代わりに、家庭で出来るリテール品が伸びていくと予測されている。
●インスタントラーメン市場
北米では、22年度にインスタントラーメンの売上が5,800万食を記録、今後も年平均1.9%の伸びが見込まれており、28年度には6,500万食になると見られている。
パンデミック中には、家で食べられるインスタントラーメン類の販売も増え、日清食品USAの2021年の売上は、前年比22%増を記録。中でも消費者の便利でお得感のニーズの高まりを背景にプレミアム商品の売上高が32.0%増加し、82.3%のシェアでプレミアムカテゴリーをリードしている。
また米国日清、米国東水でもアジアンフレーバーのラーメンを開発、販売しており、米国日清では、日本から輸入する形で、ラ王の豚骨風味(袋麺)(本物の豚骨は使用していない)をCostcoで販売をしている。
(4)主要プレイヤー「メーカー」
麺製造業者
◆ Sun Noodle:業界最大手で、70%前後のシェアーを持つ。現在CA州、NJ州に工場を持ち、3つ目の工場を建設中。(HI州に本社があり、地場の麺を製造している)
◆ Myojo USA: 日清グループで現在社長は日清からの出向者が就任している。JFCが10%出資しており、販売はJFC経由となる。また最近では、ガラスープの製造販売も行っている。
◆ JSL:永谷園の傘下。リテール品のみ製造となっている。
◆ Yamachan:元リンガーハットの社員が立ち上げており、リテール品としては、一番古いブランド
◆ Kobayashi Noodle USA:2009年に工場を設立。
ガラスープ製造業者
◆ Riken Vitamin:ガラ(ベーススープ)、三菱ライフサイエンス傘下のMitsubishi International Food and Ingredients社と近い関係にある。
◆ Somi:米国で畜肉の輸入が規制された際、原料(ガラ)を米国で調達し、日本でガラを炊いて米国に輸出をしていたが、2019年にWA州にガラ工場を設立。元々共同と関係が近く、一時は共同内に事務所を構えていた。ガラスープに加え、ラーメンスープの加工も行っている。
◆ Wako:ラーメンスープの加工が中心。自社でガラスープも炊く事が出来るが、釜のサイズが小さく、自社のラーメンスープ加工向けとなっている。現在一番伸びている会社であり、現在2工場目を検討中。
◆ Fuji Food:元々は日本向けのみの製造であったが、数年前より米国ラーメン市場向けのガラスープの製造も始めている。
◆ Ariake:元最大手のガラスープ製造工場であったが、EU資本でKerry社が買収、ラーメン向けの新規受付を辞めている。現在供給しているのかは不明。
◆ Yamasa:畜肉系が入っていない混ぜ麺スープを製造販売。
(5)主要プレイヤー「Distributor」
外食向け、小売り共に日系の問屋経由での販売が大半となっている。背景には各日系問屋にてラーメンに力をいれている事、主要販売先である日系及びアジア系スーパーへの販路がある事、レストラン向けとしては、器から具材及び日本のビール等の関連商品を一通り揃えている為となる。また共同では、新規参入者への手厚いサポートを行っており、今後もラーメン関連、特に外食向けは日系が中心となると予測されている。
◆ 共同貿易:宝酒造グループ。レストラン向けが強く、多くのラーメン店をサポートしている。Sun NoodleやSomi等と組んでいる。
◆ JFC :キッコーマングループで日系食品問屋最大手。Myojoに出資している為、ラーメン関連はMyojo製品が中心で、リテール品に強い。
◆ Wismettac: 旧西本貿易。Yamachanブランドを取り扱っているが、業務用向け麺では、十分な量を供給されていないと以前説明があった。Ramendistributor.comで外食向けラーメン専用のホームページを有する。