Ryoma dreamed Beyond the Pacific Ocean

2021年01月14日

第9号記事【パリだより】を掲載します。

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2021年、未曽有の危機に立ち向かうフランス飲食業界(後編)

 

高知県食品海外ビジネスサポーター 欧州担当
奥本智恵美

 

 多くの人にとって記憶に残る年となった2020年が終わりました。新年を迎えたフランスでも、残念ながら新型コロナウイルス危機の収束からはほど遠い現状への不安感が漂っています。昨年末から開始されたワクチン接種が事態収束のための唯一の望みであることは間違いなく、連日その話題がトップニュースを占めています。
 本記事の前編(*1)でもお伝えしたように、フランスでは昨年2回の外出制限措置が敷かれ、レストランやバーなどの飲食店は合計5ヵ月にわたって閉鎖されました。12月半ばからは夜20時まで(一部18時までの地域もあり)は外出制限が解除されていますが、これら飲食店やスポーツ施設、映画館や劇場等の文化施設の閉鎖は継続中です。

 

 昨年春の1回目の外出制限に比べて、10月末から現在に至る飲食店営業停止下では、特にパリでは多くの店が創意工夫を凝らしてテイクアウトメニューを提供しています。それに加えてデリバリーも行っている店の中には、日本でも馴染みのあるUBER EATSのようなサービス会社に配達を委託する以外に、シェフやスタッフ自らが徒歩や自転車で配達する光景も見られます。
 花開くテイクアウトメニューを眺めていて気がつくのは、弁当文化に馴染みのある日本人シェフたちの、一つの箱の中になんとも食欲をそそるおかずを彩りよく詰める技の巧みさです。日本食店だけではなくフレンチの店を経営する日本人シェフたちも、舌にも目にも魅力的なお弁当を日替わりで作っています。
 一方、フランス人シェフたちの美食探求心にも圧巻されます。弁当に代表されるように、冷めても美味しい料理が発達している日本の食文化と違い、フランス料理は冷たいものは冷たく、温かいものは温かく、というのが基本です。そこで、テイクアウト/デリバリー用の料理は、家庭で温め直した時に美味しくなるよう綿密に計算されており、同封の「温め・盛り付け法」通りの手順を踏めば、ミシュランガイド星付きレストランのフルコースも自宅で、しかも格安で堪能できるのです。レストラン側の努力もさることながら、注文する側の「いかに家でレストランを再現するか」の心意気にも感心せざるを得ません。レストラン顔負けのテーブルセッティングをし、デリバリー料理を楽しむ人たちが日々SNS上で見られます。

 

 フランスの人たちにとって、食の楽しみはとても大切なものであり、2010年には「フランス人の美食術」としてユネスコの世界無形文化遺産に登録されています。これをフランスの高級レストラン料理だと勘違いされることもありますが、そうではなく、受け継がれているのは「より美味しく食事をする」社会的慣習のことです。コロナ禍でレストランが休業している今、食事を作る側も食べる側も「限られた状況でもいかに食を楽しむか」を追求する姿から、改めてこの慣習の強さが伝わってきます。

 

 以上、未曽有の危機に立ち向かうフランス飲食業界について報告してきましたが、高知県食品のフランスさらにはヨーロッパ販路拡大のためにも、レストランの再開が待ち望まれます。ユズ玉をはじめ、ユズ果汁、ユズぽん酢、山椒、昆布など様々な高知県産品のレストラン向け販売は厳しい状況です。また大人数での集まりは規制されているため、従来型の現地商談会や賞味会を通じた新しい商品の紹介をすることはできません。
 そこで、前編の記事でも触れたフランスにおける食品ECサイトの利用増加に着目し、高知県産品のレシピ動画配信を通じたプロモーション事業を実施することになりました。ECサイトを活用する事業は、現在ニューヨークでも準備が進んでいます。
 具体的には、フランスにユズ玉他複数の高知県産品を輸入卸販売している「NISHIIKIDORI」(*2)のウェブサイト上に6品目のレシピ動画を掲載し、フランスのプロの料理人だけでなく一般家庭でも再現可能な料理を紹介します。「NISHIKIDORI」は2008年から日本全国各地の厳選食材をフランスに輸入し、広く欧州に販売網を持ちます。プロフェッショナルの顧客にはトップクラスのシェフ、パティシエが名を連ね、個人客向けには早くからインターネット販売を拡充させた後、2017年にはパリ中心部に実店舗を開店しました。少し意外かもしれませんが、同店のお客様の大部分はフランス人です。基本に忠実に和食を作りたい方もいれば、普段のフランス料理に和食材をポイントで使うことを楽しむ方もいます。今回のプロモーション事業では、パリで長年活躍されている日本人シェフに協力していただき、また和食家庭料理教室を開いている私自身もレシピ考案に携わる機会を得ました。商品に合わせて日本料理あるいは日仏フュージョン料理のいずれかのレシピを紹介し、高知県産品への理解をより深めてもらい、販売に繋げることを目的をしています。
 世界中でこれまで通りに飲食店が営業できる日が一日も早く来ることを祈りながら、今できる最善を尽くし、これからも高知県食品海外ビジネスサポーターとしての活動を続けていきたいと思います。

 
 

*1:「第8号記事【パリだより】2020年、未曽有の危機に立ち向かうフランス飲食業界(前編)」を参照。後編の公開が新年となったため、後編のタイトルは2021年としました。
*2:「NISHIKIDORI」https://www.nishikidori.com/fr/

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